学校のこと
*学校にまつわる ことば* 〜 就学にあたり 目にする機会の多い言葉を解説しています 〜
- 「通常の学級」( 一般級と呼ばれることも)
- 1学級あたり児童40人(小1のみ35人)
- カリキュラム通りの授業が行われます。
- 低学年では担任以外に補助の先生がつくことがあります。
- 個別の支援が必要な場合には、教育委員会の判定を受けて通級指導教室を利用することができます。
- 「通級指導教室」(通級)
- 通常の学級に在籍しながら、週に数時間、それぞれの困りごとや課題に応じて個別の支援(指導)を受けることができます。
- 困りごとの種類に応じて、支援を受ける教室の種類が異なります。
- 学校によっては、その児童に必要な種類の教室が設置されていない場合があり、地域の他の学校の教室へ通う場合があります。
- 神奈川県では(平成28年度)通級指導教室は全小学校の9.9%、全中学校の2.1%、特別支援学校5校に設置されています。通級による指導・支援を受けている児童生徒(小中学校合わせて)のうち、在籍する学校で指導・支援を受けられているのは21%です。設置の基準は明確でなく、自治体によって判断が異なります。
- 「特別(個別)支援学級」
- 1学級あたり児童8人
- 個別の支援(指導)計画に沿った授業が行われます。
- 給食の時間や、体育、得意な科目など児童の状況に合わせて通常学級に移動して過ごす交流級を利用することがあります。
- 中学校では、内申点が付かず一般の公立高校受験がしづらい場合があります。
- 「特別支援学校」
- 1学級あたり児童6人(2つ以上の障害を併せ持つ場合は3人)
- 個別の支援(指導)計画に沿った授業が行われます。
- 特別支援学校の教員は通常の教員免許の他に特別支援学校の教員免許を取得しています。
- 「就学相談」
- こどもの就学先について相談したい場合は、地域の教育委員会へ就学相談を申し込むことができます。通常は就学前年の5-6月に相談の申し込みが開始になります。自治体により異なるので、広報紙や自治体のウェブサイトなどで申し込み時期や方法を確認します。申し込みをしなかった場合にも、就学時健診(10-11月)を受けた際に、就学相談をすすめられることもあります。
- 就学相談の目的は、こどもが学校で学ぶにあたり配慮が必要なことについて保護者や学校関係者が情報を交換し、その上で、こどもの持っている力を発揮できるような環境や支援の方法について一緒に考え準備することです。
- 通級指導教室の利用や支援学級、特別支援学校に通う場合には、教育委員会での判定が必要となります。
- 就学相談を担当するのは教育委員会の担当者や医師、心理士などです。
- 2006-2009年に1500g未満で出生したお子さんを持つ保護者へのアンケートでは小学校入学時に、回答者41名のうち21名(51%)が自治体の就学相談を利用していました。
良かった理由
- 発達について相談できた (12/19名)
- 学校の情報を得られた (12/19名)
- 進学先について相談できた (9/19名)
- 不安なことを解決できた (6/19名)
- 通常学級:5名(24%)
- 通級利用:4名(19%)
- 支援級:9名(43%)
- 特別支援学校:1名(5%)
- 私立学校:1名(5%)
- 回答無し:1名(5%)
- 通常学級:19名(95%)
- 私立学校:1名(5%)
進学・就学体験談のページ に
先輩たちの進学・就学体験談を掲載しています。
参考になることがあるかもしれませんので、ぜひ一度目を通してみてください。
- 「特別支援教育コーディネーター」
- 全ての小・中学校には特別支援教育コーディネーターがいます。
- 児童・生徒本人や保護者の困りごとについて相談の窓口となり、担任の先生だけでなく校内の関係職員や外部の専門機関などと必要に応じて連携しながらチームで支援の方法を考える調整役となってくれます。
- 担任の先生を通しての相談のほか、生徒指導担当の先生、養護の先生から連絡してもらうことや、コーディネーターに直接電話で連絡を取ることも可能です。
保護者の方が相談しやすい先生に連絡をするのが良いでしょう。
- 学校のこと 〜アンケート結果紹介〜
1500g未満で出生したこどもをもつ、当院NICU卒業生の親御さんに、学校生活についてのアンケ―ト調査を行い、109名の方から回答を頂きました。
その一部をご紹介します。
多くの方が、入学後、様々なことに成長を感じられていました。
困ったことのなかでは「勉強」「友達との関係」の回答が多くみられました。
勉強について
今回のアンケートではおよそ半数の方が「勉強」と回答しましたが、早産のお子さんの「学習の苦手」の原因はまだ十分に解明されていません。
学習について特別な困りごとのないお子さんもいます。
1000g未満で出生したお子さんのおよそ2割では、IQに見合わない学習の苦手(発達・知能指数から想定されるよりも学習の効果が得られにくい)があると報告されています。
早産児の学習の苦手に関わると考えられる要因
視たり聴いたりした情報を一時的に記憶しながら処理するのが苦手
集中しづらい
要因は様々ですが、自信のなさや不安のために、本来もっている力を発揮できないこともあります。
当院では小学2年の段階で読み書きについての難しさがあり、検査や支援を希望される場合には言語聴覚科での検査やアドバイスを行っています。アドバイスにより、前向きに学習に取り組むことができるようになるお子さんがいらっしゃいます。検査には一定の時間がかかるため、検査による負担と得られるメリットについて、よく相談した上で行います。
集中力・落ち着きがない
早産のお子さんでは、年齢によって異なりますが(年齢が上がると改善傾向がみられる)多動(落ち着きがない)の傾向があることが報告されています。
「落ち着きのなさ」に関わると考えられる要因
気持ちが移りやすい
(音や目に入るものに敏感)
身体感覚の鈍さから無意識に刺激を求めて動いてしまう
姿勢を保つのが苦手
(筋力不足・バランス感覚の弱さ)
以下のような対応がお薦めです。
- 集中しやすい場所に座る(窓際・廊下側や後方席は集中しづらい)
- 黒板や作業する場所の周りをすっきりさせる(制作物や飾りをつけない)
- 椅子や机の調整(座ったときに膝と肘が90度、両足裏が床につく)
- 指示があるときや疲れがみえたときに個別の声かけ(可能な範囲で配慮をお願いする)
- 短時間でも集中できたらたくさん褒める!
「落ち着きのなさ」は、程度や状態によっては投薬により改善される場合があります。
気になる様子があれば外来でご相談ください。
落ち着きがないのはわざとじゃないよ
好きなことなら集中できるよ
お友達との関係
言葉や行動の幼さなどからお友達との関係に悩む方がいらっしゃいます。
一方で、66%の方が「お友達が増えた」と回答されました。
コミュニケーションが上手で、楽しく過ごせるお子さんも多くいらっしゃいます。
外来でご相談をうける内容として多いのは
- お友達との距離感をつかめず、近づきすぎてしまう
お話するときは「前ならえ」でぶつからないくらいの距離をあける練習。
- 何かに集中していて、友達に話しかけられても気が付かず「知らんぷりされた」と受け取られる
話しかけるときは正面から目を見て声をかけてもらうようお願いする。気づかないときがあるんだよ、ごめんねと伝えておく。
- 友達から話しかけられたことに関係なく一方的に話したいことを話してしまう
お話するときは順番だよ、楽しいお話だけどずっと聞くのは疲れちゃうなぁと伝える。
- 社交辞令や比喩表現をそのままうけとってしまう
低学年の間は具体的・直接的な表現にする。
ちぐはぐな反応があっても批判したり笑ったりせず、意味を分かりやすく伝える。
- 嫌なことを嫌と言えず、ニコニコしてしまう
お母さんやお父さんとなんでも話せるような関係を築くことができれば、少しずつ嫌な気持ちを表現できるようになるかもしれません。
なにかあったときには「そうだったんだ、話してくれてありがとう!」「いやだな、おかしいな、と思ったら、先生やお母さん・お父さんに相談してね」と伝える。
家族と過ごすなかで、少しずつ練習・説明していくことや、学校で様々な経験をするなかで年齢とともに解決していくこともあります。
先生や仲の良いお友達にあらかじめ伝えておくことで、トラブルが大きくなる前に対応できるとよいかもしれません。
参考になる書籍(注:「発達障害」と診断されるほどでない場合でも、困りごとへの対応方法が参考になることが多いため、発達障害の関連書籍をご紹介しています。)
- 「発達障害&グレーゾーンの小学生の育て方」(井上雅彦著、すばる舎)
:小学生の家庭や学校での困りごとについて、項目ごとに数ページずつアドバイスが書かれています。
- 「発達障害&グレーゾーン子育てから生まれた楽々かあさんの伝わる!声かけ変換」(大場美鈴、あさ出版)
:子育てはイライラの連続です。声の掛け方次第で、自分も子どももイライラが減るかも・・・変換表をダウンロードできます。
- 「発達障害?と悩む保護者のための気になる子の就学準備(特別支援教育がわかる本)」(温泉美雪、内山登紀夫、ミネルヴァ書房)
:もしかしたら学校で個別の配慮が必要かも・・と考えた時、就学までにどんな準備が必要か、就学後の進路変更はどのようにするのかなど漫画やイラストでわかりやすく解説されています。
- 「子どもの発達障害 家族応援ブック」(高貝就著、法研出版)>
:発達障害やグレーゾーンの子どもを理解するための考え方や接し方、困りごとへの対処方法が書かれています。実際のご家族の体験談や漫画がありイメージが湧きやすいです。
- 「スクールカウンセラー」
- 児童・生徒や保護者の困りごとについて、臨床心理についての専門的な知識にもとづいてサポートします。(カウンセリングや心のケア)
- 担任の先生や生徒指導担当の先生、特別支援コーディネーターを通して連絡するのが一般的です。相談方法は「スクールカウンセラー便り」など年度はじめに配布されるプリントに記載されることが多いので、確認しておくと良いでしょう。
*先生に聞いてみた! あんなこと こんなこと どうしたらいい??*
中学校教員として、特別支援教育に専門的に携わっておられる神奈川こどもNICU卒業生の親御さんに、就学や学校とのやりとりについて、お話を伺いました。
- 通常学級や支援学級など進学先で悩むとき、どのように考えたら良いでしょうか。
- 発達検査の結果だけでなく、こどもの集団生活への適応度やこどもの満足感、親としての想いも考慮することが大切です。保育園・幼稚園の先生や、療育を受けているならば療育の担当者、発達検査に関わる臨床心理士さんの意見も聞いてみると良いでしょう。学習の理解度だけでなく、取り組み方や行動の仕方などに目を向けることで、選択の方向性が変わることもあります。
こどもは成長していくので、成長に合わせて在籍する学級や支援の内容を再検討することも必要です。将来を見据えた環境整備を、成長の段階ごとに考える必要があります。こどもの状態を見ながら、短期・長期的に目標を設定して、定期的に学校や医療・療育機関と相談していくことが大切です。
- 就学相談や就学時健診ではどのようなことを伝えたら良いでしょうか。
- こどもの状態、得意なことや苦手なことをよく理解して伝えることが大切です。幼稚園・保育園の先生や療育センター、医療機関などと就学に向けた相談をした場合には、その内容を伝えます。就学予定の学校と事前に面談ができていればその内容を伝えます。学校との面談は、保育園・幼稚園を通して、または直接学校に連絡して申し込むことができます。就学時健診ではあまり多くのことは伝えきれないので、別日(または入学後すぐ)の面談を申し込むのがおすすめです。
- 就学前や後に学校の先生(校長先生など)と面談するときに確認すべきことはありますか?
- こどもの状況や学校での支援に必要な情報は定期的に(学年が変われば、そのたびに)学校へ伝えることが大切です。繰り返し話をする機会をもつことで支援が変わることもあります。
就学前であれば保育園・幼稚園と就学する学校との引き継ぎが行われているかどうか。就学後は、就学前に相談した内容が担任の先生や学年主任などに伝わっているかどうか。こどもの指導方法について学校全体で共有できているかどうかを確認します。
教職員間での伝達があっても、保護者が直接思いを伝えることは重要です。
学校との面談は、担任の先生だけでなく、学年主任や特別支援コーディネーター、児童支援専任(横浜市)、養護教諭など学校全体を見ている教員を入れてもらうこと、複数での対応をお願いすると良いです。また相談をする側も、親は一人でなくできれば両親、祖父母など複数で臨む方が良いでしょう。
- 先生であり、親御さんでもある立場から、就学を迎える親御さんにアドバイスをお願いします
- こどもの得意なこと、苦手なことをよく理解するのが大事だと思います。
「できないことでイライラしてしまう」ということを親自身が常に頭に入れておくことです。(それでもつい、イライラしてしまいます)他のこどもと比べることは仕方ないことです。でも、こどもの前では言わない、態度に出さないように気をつけています。相談できる人、悩みを共有できる人を見つけましょう。こどもの状態を、こどもの養育に関わる人みんなが受容できるような環境づくりができると良いです。親が受容することは、こどもの気持ちを安定させ、発達を促すことに繋がると思います。